
ある日、その練兵場から真っ黒な巨大な煙が中空に昇っていくのが遠望できた。
僕たちはすぐに裏山に駆け登った。ここからなら練兵場の様子が何物にも遮られずに見えるのである。
黒煙は練兵場の中央辺りから立ちのぼっている。その周囲を取り囲むように米兵のジープが数台並んでおり、兵隊たちの姿も見える。
もっと間近で見たい、確かめたいと思った。僕は一年生のXを誘って練兵場まで走った。身の丈の倍はありそうな夏草をかきわけ、見よう見まねで覚えた兵隊たちの匍匐前進の要領で何とか鉄条網の近くまで辿り着いた。
生い茂る夏草の隙間から黒煙の根元をうかがうと、山のように積み上げられたおびただしい銃剣や銃が燃やされていた。時折、風に乗って兵隊たちのにぎやかなやりとりが聞こえてくるが、むろんのその意味がわかるはずもない。
もうずっと以前から一機だけおいてあった決して飛ぶことのない旧式の戦闘機も黒煙に包まれていた。
僕たちは息をのんでその光景を眺め続けた。それがわが歩兵連隊の武装解除のとむらいだとは後になって知ったことである。
いったん引き揚げた僕たちは、夕闇にまぎれてもう一度そのむらいの現場に引き返した。僕たちの人数は上級生を含む四、五人に増えていた。大きな黒煙はもうおさまり、黒焦げになったサーベルや銃剣の山の奥の方にチロチロと赤い火が動くのが見えた。
あたりにもう兵隊たちの姿はなかった。僕たちは恐る恐る鉄条網の隙間を手で押し広げてくぐり抜け、辺りをうかがいながらさらに黒い山に近づいた。油の匂いが鼻をつく。
おびただしい量の銃剣たちであった。触ってみるとまだ熱をもっている。しかし、持てないほどの熱さではない。サーベルは長過ぎて子供たちの手には余る。僕は一本の剣をその山から引き抜いて持ってみた。ずしりと重く、まだ暖かい。平時は兵隊さんたちが腰に吊り下げているが、正規の軍装のときには銃の先っぽに着剣するので、ゴボウ剣と呼ばれていた短剣である。
僕たちはそれぞれ一本ずつこのゴボウ剣をかついで村に凱旋した。と言っても大人たちに見つかってはまずいだろうという知恵は働いた。そのまま裏山の我らが秘密基地に直行し、暗がりの中で穴を掘り、そこに埋めた。
翌日から、僕らはその秘密基地を訪れては、ゴボウ剣を掘り出し、家から持ち出したボロ切れで磨き続けた。磨いては、しげしげとその刀身を眺め、また磨き続けた。錆がきはじめていた剣もこうして磨き続けると次第に少しずつ光を取戻し、油の汚れも土に吸い取られていくようだった。
僕らはそれからしばらくの間、この秘密基地の遊びに酔いしれた。